短編(アイシ・ヒルセナ)

□ハロウィンの夢
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部室に一歩足を踏み入れて、セナは一瞬ギョッとした。
そこにあるのはジャック・オ・ランタン。ハロウィンのかぼちゃのちょうちんだ。
もっとも本物のかぼちゃではなく、プラスチック製の玩具。
クリスマスボウルを目指し、激しい練習の日々の部員たちが少しでも和めるように。
そんな思いからまもりと鈴音が用意したものだった。
ここのところ何だか体調が悪い。今日もこれから練習なのにひどく疲れている。
かぼちゃなんかに驚いてしまうのはそのせいかと、セナはため息をついた。

セナがまだかなり小さい頃。
クォーターのまもりが両親の知人のアメリカ人宅のハロウィンパーティに呼ばれた。
折角だからと言われ、セナもついて行ったのだ。
皆でちょっとした仮装をして、形ばかり「トリック、オア、トリート」と言ってお菓子をもらう。
でも幼いセナにとってはこの上なく怖いものだった。
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