短編(アイシ・ヒルセナ)

□警備員さんと小さな少年
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俺は母校の制服を着た小さな少年に思わず顔が綻んだ。

高校を卒業した俺は警備会社に就職した。
初めての仕事が母校の近くの商店街の「春の商工会まつり」の警備だ。
深緑色のジャケットの生徒たちをみると懐かしい。ついこの前まで俺も着ていたのにな。
その俺の視界に細い路地から飛び出してきた小さな少年が目に止まった。
1年生ってのは不思議とわかるもんだ。初々しいからか、制服を着慣れてないって感じだからか。
ダブダブの上着。きっとすぐ背がのびるから、なんて願いがこもってんのかな。かわいい。

だがその少年の挙動は不審だった。
辺りをキョロキョロと見回し、おろおろ、あたふたと足踏み。
警備員の俺としては、放っておけない怪しさだ。
ただ初仕事があんな小さい子に注意するってのもなんだかなぁ。。。
俺の迷いは短時間で終わった。
次の瞬間、少年は思わず鳥肌が立つほどの鮮やかなダッシュで走り出したのだ。
そして俺のいる方、人ごみの中に飛び込んできた。
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