短編(アイシ・ヒルセナ)

□トロフィー
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ヒル魔さん、出来ました〜♪という間抜けな声。俺はそちらに視線を向ける。
出来上がったトロフィーは、一般的に想像するそれとはかなり違っていた。
そもそも真っ直ぐに立っておらず、大きく傾いている。
しかも余ったパーツを無理矢理貼ったらしく、変なところで枝分かれしている。
その他の余った細かい破片はもう適当に貼り付けたようだ。
それによく見ると、俺が撃った後の空の銃弾とか誰かの取れたボタンとか。
そもそも元のトロフィーの破片でないものまでくっついている。
どうやら途中からパズルを諦めて、アートに変わっちまったらしい。
結果出来上がったのは、妙にコミカルな物体だった。
俺は眉根を寄せて、顔を強張らせた。よく笑い出さずに堪えたと思う。
そのまま怒っている風を装って、テメーらさっさと練習に行きやがれ!と怒鳴り散らした。

俺は全員を追い出した部室に戻り、鍵をかけ、完全な密室にして。
そして今度こそ堪えきれずに笑いだした。
完璧なトロフィーはあの時を思い出して、辛いかもしれないが。
この不恰好でコミカルで何だか愛嬌のあるトロフィーは悪くないかもしれない。
一生懸命で、時に無茶苦茶で、でもどこか皆を惹き付けるアイツに似合っている。

クリスマスボウル出場で終りではない。そこで勝つことがゴールだ。
俺は世界に1つしかないトロフィーを見ながら、決意を新たにする。

【END】
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