短編(アイシ・ヒルセナ)

□オニキス
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おずおずと差し出した箱を開けたヒル魔さん。
一瞬驚いたように目を見開き、そして嬉しそうに笑ってくれた。
無理したんじゃねえのか?と言いながら、3つの金のピアスを外しはじめる。
桜庭さんに悪いことしました。と僕が言うと、ヒル魔さんにはわかったようだ。
せっかくのベストイレブンの賞品、売っちまったのか?とちょっと淋しそうに言う。
ベストイレブンなんてヒル魔さんがいなかったら貰えてませんから、と僕は笑った。
するとヒル魔さんの長い指が僕の左手首を掴んだ。
そして外したばかりの金のピアスの1つを薬指にはめてくれる。
代わりにやるよ、ベストイレブンの賞品だ。
金のピアスはずっしりと重い。その感覚に僕は急に焦る。
ヒル魔さんのピアスってすごく高価なものなのではないだろうか。
僕があげたようなオニキスなんかよりずっとずっと。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、ヒル魔さんは僕に囁いた。
新しいピアス、テメーがつけてくれよ。
僕は慣れない手つきでヒル魔さんにオニキスのピアスをつけていく。
指が少し震えているのは、僕の左手薬指で光る金の輪が重いからだと心の中で言い訳しながら。

【END】
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