短編(アイシ・ヒルセナ)

□オニキス
1ページ/3ページ

ありがとう、桜庭さん。。。
僕は心の中で何回も感謝しながら、軽やかな足取りで走った。
ポケットにはキミドリスポーツで受け取ったばかりの1万円札が2枚。
東京都大会のベストイレブンの賞品のスパイクを売ったのだ。

どうしても買いたいものがあった。僕にしてはかなり高価なもの。
でも貯金もないし、関東大会に備えての練習があるからバイトする時間もない。
藁にも縋る思いでキミドリスポーツにスパイクを持ち込んだ。
このスパイクは『モデル・SAKURABA』それは貰う時に僕も聞いた。
桜庭さんが芸能活動を止めてしまったために現在は製造していないらしい。
しかも東京大会の賞品ということで限定デザイン。当然未使用。
顔なじみの店主のおじさんは興奮気味に早口でまくしたて、目を輝かせて喜んだ。
桜庭さんの綺麗な顔が頭に浮かぶ。ありがたいような申し訳ないような。
何だか複雑な気分だったけど、とにかく臨時収入を手にした。
そして僕はそのまま駅前のアクセサリーショップに駆け込んだ。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ