パラレル小話(セカコイ)

□崇拝者
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*キャラ壊れ気味の上、不道徳で背徳的な内容なので、ご注意ください。

翔太さんはいつも綺麗で、かわいらしいですね。
雪名は一糸纏わぬ姿で、寝惚けてぼんやりしている男に話しかけた。
10代と言っても通りそうなこの童顔な男は、実はもう三十路なのだ。
だけど未だに若々しく愛らしい容姿は、朝の光の中でも少しも陰りがない。

雪名皇は美大を卒業した後、アルバイトなどをしながら生計をたてていた。
就職をしなかったのは、画家になる夢を捨てられなかったからだ。
だが地道に努力するつもりもなかった。

雪名の大学では、奇妙な噂話があった。
ある有名大企業の御曹司で、画家のパトロンになるのが趣味という男がいる。
美大を卒業したばかりの画家の卵の中から気に入った者を見つけると、惜しみなく投資する。
キャンバスや絵の具などの費用はもちろん、家賃や食費など生活費一切出してくれるというのだ。
雪名は噂の男、木佐翔太と会った。
パトロンになって欲しいという雪名の申し出に、あっさりと「いいぜ」と答えた。

雪名はその日のうちに、木佐が用意したマンションに引っ越した。
都心の高層マンションの上層の部屋はとにかく豪華で、文句を言いたくなるほど広い。
まるで高級ホテルのスィートルームのようだ。
毎日ハウスキーパーが掃除に来るし、洗濯も汚れた衣類を出しておくだけでしてくれる。
食事はどんなものでも言うだけで取り寄せてくれた。
本当に絵を描く以外のことは、何もしなくてよかった。

だがもちろんその代償はある。
週に1、2度やって来て、泊まっていく木佐を抱くこと。
それがこの生活の条件だった。

絵は進んでいるか?
木佐は雪名の部屋に現れると、いつも最初にそう聞いてくる。
ええ。でもまだ少し時間がかかりそうです。
雪名もまた決まってそう答えた。

雪名は絵を仕上げるつもりなどさらさらなかった。
木佐は画家の卵のパトロンになるのが趣味なのだ。
画家として売れてしまったら、もうこの生活は終わってしまう。
何もせずにいられるこの生活は魅力だ。

さらに雪名はセックスの相手としての木佐を気に入っていた。
少年のような肌も身体つきもいい。
童顔なのに、情事の最中には色香を放つ表情もいい。
この身体を自由にして、乱れさせることが楽しくてたまらない。

俺はお前の才能を崇拝しているんだ。
木佐は情事の最中に、いつもうわ言のようにそう呟く。
つまり愛しているのは絵の才能だけで、雪名本人ではないということだ。
それは少々癪だが、別にいい。
それならばこちらもせいぜいこの状況を楽しんでやればいい。

このまま絵が描けなければ、いつかここを追い出させるかもしれない。
だが雪名はそれならそれでいいと思っている。
あの有名な「木佐翔太」に才能を崇拝されているのなら、自分には一流の画家になる才能があるはずだ。
それならば焦ることはない。
木佐と離れた後に、自力で画家としてデビューしてやるまでのことだ。

それでも雪名は時々思う。
こんなパトロンと愛人のような関係でなく、街で普通に出逢って恋愛していたら。
もしかしたら結構お似合いの恋人同士になっていたのではないだろうか。
そしてそんな甘いことを考えている自分を自嘲しながら、絵筆を取るのだ。
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