パラレル小話(セカコイ)

□協力者
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これほど大事な存在になるとは思わなかった。
羽鳥は組み敷いた青年の裸身が乱れる様子を楽しんでいた。

羽鳥芳雪は、最近メキメキ業績を上げてきた有名企業の社長の家に生まれた。
やり手の父親は、いずれは羽鳥に事業の全てを譲るつもりのようだ。
羽鳥としても特に異議はなく、大学を卒業してすぐに父親の会社に就職した。
幸いなことに、羽鳥は仕事の上では極めて有能だった。
周囲のやっかみの声などものともせず、バリバリと仕事をこなした。

いわゆるアラサーなどと言われる年齢になり、羽鳥は父親から常識はずれな贈り物をもらった。
系列子会社の社長の椅子、有能な秘書。
そして今羽鳥が嬲って楽しんでいる青年だった。

社長の椅子はまぁいい。
秘書をつけてくれたのもありがたい。
彼は元々父の会社の秘書課の社員で、羽鳥の同じ歳の猫のような目をした美青年だ。
羽鳥のことはどうやら好きではないようだが、職務には実に忠実で有能。
ベタベタした馴れ合いが嫌いな羽鳥としては、こういう割り切った付き合いがいい。
だが「愛人にしろ」とかわいらしい容姿の青年が届けられたときには、流石に驚いた。

理由を聞けば、何のことはない。
父は若い頃、女遊びが過ぎてやっかいなことになったことがあるのだという。
その経験から、息子はよからぬ企みを持った女に引っかからないようにという配慮だった。
性的な欲求を満たす玩具として、彼を用意したのだ。
女ではなくて男なのは、妊娠の可能性をなくすためなのだろう。
まったく生々しいにも程があると、羽鳥は呆れた。

だが今はすっかりこの青年−吉野千秋が気に入っている。
童顔で少年のように見える青年は、見た目に違わず情事にはかなり不慣れだった。
それをまさに手取り足取り、徹底的に教え込んだ。
慣れないながらに必死に身体を開く千秋を嬲るのは、本当に楽しかった。
そして今や千秋は、羽鳥の愛すべき作品だ。
少年のようなあどけない顔立ちと、羽鳥に磨かれた淫らで艶っぽい身体。
アンバランスな美しさは、羽鳥を魅了して止まない。

社長、EU取引の件で緊急にご判断が必要だそうです。すぐに会社の方へ。
不意に寝室のドアが開き、秘書の柳瀬優が入ってきてそう言った。
海外に支社を置いている関係で、今日のような深夜の呼び出しはたまにある。
だが羽鳥はいつもの通り、千秋を貪っている最中だ。
今夜の趣向は千秋の屹立の根元を押さえつけて、羽鳥ばかりが何度も達していた。
柳瀬の登場は羽鳥にしたらちょうどいい、千秋にしたら最悪のタイミングだ。

残念だったな、千秋。
羽鳥がすばやくベットから身を起こすと、千秋は「そんな」とすがるような目で羽鳥を見る。
情欲に潤んだ瞳と、昂ぶって震える身体。
羽鳥はため息を1つつくと「柳瀬。楽にしてやれ」と言い放った。

かしこまりました。
柳瀬は口元を歪ませて笑うと、ベットに上がり、千秋の身体に手を伸ばす。
羽鳥は柳瀬と千秋が絡み合うのを見ながら、身支度を始めた。
柳瀬に嬲られて、羽鳥に見られることで、千秋はますます淫らな快楽に沈んでいく。
羽鳥にとって柳瀬はただの秘書ではなく、一緒に千秋を輝かせる協力者だ。

先に行く。それが終わったらお前も会社に来い。
身支度を終えた羽鳥が声をかけると、柳瀬が「わかりました」と答える。
柳瀬のサディスティックな笑みと千秋の嬌声に見送られて、羽鳥は家を出た。
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