拍手短編(アイシ)

□小悪魔
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関東大会優勝記念の船上パーティの後。
半狂乱になった糞マネから「セナがいなくなった」と連絡があった。
パーティの途中でいなくなり、もう数時間経つと言われ、焦った。
しかしその後、帝黒学園の偵察に大阪に行ったのだと聞かされたときには呆れるしかなかった。

その後、練習に現れたセナ。
俺が怒っていることもわかるだろう。いつもならそんな俺の前ではビクビクしているのに。
セナは至って普通に、俺の視線を受け止めている。
そんな俺の疑問がわかったのか、セナがゆっくりと喋りだした。
一緒にプレーしたけど大和くんってすごいです、と笑う。
ヒル魔さんは怒るかもしれませんけど、僕は行ってよかったです。
そういうことか。俺は理解した。多分セナはまた何かを掴んだのだ。
最強と言われる帝黒学園を見た上で、コイツは落ち着いて微笑さえ浮かべている。

完全に怒るタイミングを逸した俺の鼻先に「お土産です」とセナが差し出したのは。
表紙に「秘」と書かれた帝黒の分厚いプレーブックだった。
何だか心配した俺が馬鹿みてーじゃねぇか。
せめて皮肉の一つでも言ってやろうとした俺に、セナはとどめの一言を放った。
帝黒のQBもすっごい美人でした。
あ?帝黒のQB「も」?「も」ってのは何だ!
今度こそ完全に絶句する俺に、セナは悪戯っぽく笑っている。

ああ、もうダメかもしれない。
この俺ともあろう者が。すっかりこのチビに振り回されている。

【END】
 

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