短編(セカコイ)

□大丈夫
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どうだった?律っちゃん!
そう聞いてきたのは、木佐さんだ。
俺は「楽しかったです」と答えた。
そして忙しい時期にすみませんでした、と頭を下げる。
社会人になってすっかり上達した作り笑顔。
きっとうまく誤魔化せているだろうと思う。

丸川書店の20××年入社の人たちは、とても仲がいいらしい。
同期の絆っていうのかな。
もちろんいろいろな部署に散って、違う仕事をしている。
だけど同期会と称して、飲み会とかカラオケとかよく集まっているんだという。
そんな話を聞いて、ちょっとだけ羨ましいなと思った。
俺は小野寺出版では「コネ」だの「七光り」なんて言われて、なんとなく浮いていたからだ。

ちなみに俺が小野寺出版に入ったのも20××年。
まっすぐ丸川書店に入っていたら、俺はこの人たちと同期になっていたんだよな。
そう思うと、余計にちょっと特別な目で見てしまったりする。

そんな俺の気持ちとは関係ないだろうけど、俺に誘いが来た。
20XX年組の同期の人たちが集まる飲み会。
同じ歳のよしみで参加しないかと招待されたのだ。
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