短編(黒バス・木黒)

□巨大バイスクローおにぎり
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これもある意味「誠凛を守る」なのかもしれない。
黒子は大きく頼もしい姿を見ながら、そう思った。

ウインターカップが終わり、木吉鉄平は一線を退いた。
怪我の治療に専念するためだ。
おそらく卒業まで、試合に出場することもないだろう。

だけどバスケ部の練習には参加している。
怪我に支障がない程度に身体を動かして、なまらないようにする。
それに練習の手伝いだってする。
例えばシュート練習の時、ゴール下で手を伸ばすだけで、ブロックをかいくぐる練習になる。
木吉の大きな身体は、動けなくてもしっかりと練習に貢献していた。

そして新入生を迎える前に組まれた合宿でも、木吉はその存在感を発揮した。
例によって金がないので、格安旅館での宿泊、そして自炊となる。
木吉はその合宿にも随行し、食事係を買って出たのだ。
これは部員たちにとって、大いにありがたいことだった。

これもある意味「誠凛を守る」なのかもしれない。
黒子は大きく頼もしい姿を見ながら、そう思った。
何しろそれまでは、リコの料理で何度も命の危機を感じたからだ。
ばぁちゃんに習ったという木吉の料理は、高校男子としてはまぁまぁできる部類だろう。
和食が多いので「もっとガッツリ肉が食いたい」などと言っている部員もいる。
だけど小食の黒子としては、こういうメニューの方が嬉しかった。

その黒子が唯一苦手なのが、木吉のおにぎりだった。
昼食や夜食としてときどき登場するメニューなのだが、何せあのデカイ手で握るのだ。
あの火神でさえ「デケェ!」と声を上げるおにぎりは、黒子には大きすぎる。
小食な黒子には、1個残さずに食べるだけでひと苦労だった。
だけどせっかく木吉が作ってくれたのだから、絶対に残したくない。
その結果、胃がパンパンになり、その後の練習が少々つらい。

それでもそれは、些細なこと。
こうして木吉と一緒に合宿に来られて、手料理もいただけるんだから幸せだ。
黒子はそう思いながら、ハードな練習をこなしていた。
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