短編(黒バス・木黒)

□イベリコ豚カツサンドパン三大珍味(キャビア・フォアグラ・トリュフ)のせ
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絶対に無理ッス!
1年生たちはフルフルと首を振る。
だが監督こと相田リコは厳しい表情で、納得しなかった。

季節は巡り、誠凛高校バスケ部は新しい1年生を迎えた。
ウィンターカップでの活躍があり、部員希望は殺到した。
だが「屋上での声出し」という恒例行事で人数はかなり絞られ、10名強に落ち着いた。

その1年生たちに、またしても恒例の指令が下った。
それは毎月27日に発売される幻のパンを買ってくるというものだ。
1年生たちの最初のリアクションは、昨年の1年、つまり火神たち現在の2年と同じだった。
パン買ってくるだけだろ?チョロイじゃん、ですよ。
意気揚々と売店に向かうニューフェースたちを、2、3年生は笑顔で見送った。

だがいつまで待っても戻ってこなかった。
心配になった2、3年生は、売店に様子を見に行く。
すると学生服も乱れ、ボロボロになった1年生たちが人垣の後ろで座り込んでいた。

何だよ、だらしねーな!
火神がヘタばっている1年生たちを見下ろして、容赦なく言い放った。
だがこの言葉は少々不公平だ。
現2年生だって、昨年は同じような感じだったのだ。
突破口を開いたのは黒子で、彼がいなかったら同じ結果になっていただろう。

しかも昨年とは違う事情もある。
人気が上がり、買い求める人間も激増していたのだ。
それは他ならぬバスケ部のせいだった。
年度初めにこのパンを手に入れて、ウィンターカップで破格の躍進を遂げた。
そのことが評判を呼び、縁起がいいパンとして、ますます人気が上がったのだ。

無理ッス!絶対に無理ッス!
1年生たちは涙目になりながら、フルフルと首を振る。
リコは不甲斐ないと思いながら、去年よりかなり人が増えた売店を見た。
確かにこれは去年、一昨年とは勝手が違うかもしれない。

黒子君、悪いけど買ってきてくれるかな。
リコは部員の中でも特異な性質を持つ2年生部員を指名した。
すると火神の後ろから「はい」と声が聞こえて、1年生たちが「うぉ!」と驚いている。
最近のリコは黒子に用があるときは、姿が見えなくても声に出すようにしている。
すると黒子の方から姿を現して、返事をしてくれるのだ。
いちいち捜してから声をかけるより、この方が楽だ。

じゃあ、行ってきます。
金を受け取った黒子は、するりと人垣の中に入っていった。
何で黒子なの?
木吉鉄平はリコにそう聞いた。
するとリコは不敵な笑顔で答える。
去年の成功者にやらせてみれば、本当に今年は難易度が高いのかどうかがわかるでしょ?
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