短編(アイシ・十セナ,ムサヒル)

□護りたいもの
1ページ/2ページ

この先またセナは、こういうことになるのだろうか。
十文字は叫びだしたいような衝動を懸命に抑えていた。

関東大会の初戦、泥門デビルバッツは神龍寺ナーガに辛うじて勝った。
だがその代償は大きい。
ヒル魔たち2年生の因縁の相手、金剛阿含は恐ろしい相手だった。
たった1回相対して、辛くもTDを決めた十文字には、それがよくわかった。
セナはその阿含に真っ向から勝負を挑んだ。
そして今、セナは試合後のロッカールームで、膝の痛みに耐えている。

溝六がセナの膝をあちこち指で押しながら、確認している。
セナは時折「大丈夫です」「そこは痛いです」などと答えていた。
未だに息は整わない様子で、肩で忙しなく呼吸している。
十文字はそんなセナを見ながら、何も出来ない自分を歯痒く思う。

この先クリスマスボウルまで、こんなことが続くのだ。
阿含のような敵意をあからさまにしたヤツがどれほどいるかは知らないが、試合はまだまだ続く。
相手はどんどん強くなるだろうし、エースであるセナにかかる負担も大きくなるだろう。
今までは共に戦い、頂点を目指すことに喜びしか感じていなかった。
だが痛めつけられて、ボロボロになったセナを見て、芽生えた新たな感情。

もうセナをこんな目に合わせたくない。
アメフトのフィールドになど立たせたくない。
十文字はそんな思いを持て余しながら、痛々しいセナの姿をじっと見ていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ