短編(アイシ・十セナ,ムサヒル)

□前途多難
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「ため息つくと、幸せが逃げるぞ」
そんな十文字の台詞もため息混じりだった。

十文字とセナがお互いの想いを受け入れたのは、デスマーチの最初。
だから晴れて恋人となったところで、何が出来るわけではない。
せいぜいわずかな休憩時間の間に、周りの目を盗んでちょっと話をする程度だ。

セナはいつもマネージャーであるまもりの動きを目で追っている。
それにははっきりした理由がある。
セナの姉代わりを自負しており、セナに対して盲目的な愛情を注ぐまもり。
そのまもりだけがアイシールド21がセナであることを、知らない。
だからちょっとした仕草や言葉でばれないようにと、まもりがいるところではセナは気を使う。

そのセナの視線を一緒に追っていたから、十文字も気がついた。
姉崎まもりはヒル魔に好意を寄せている。
ヒル魔のすることをさりげなくフォローするとか、こっそりとアイシングをするとか。
それを他の部員たちの目を盗んで、本当に上手くやっている。
そんなまもりの様子を見て、セナはいつもため息をつくのだ。

十文字はそれを見て、不安に陥る。
アイシールド21の正体を知らない頃には、ヒル魔とセナが恋人同士なのではないかと疑った。
まもりのいっそ見事なセナへの過保護っぷりもまた脅威だ。
そんな話をセナにしたときには、セナは「嬉しい」と言って笑った。
嫉妬されたことが余程嬉しかったようだ。
そしてヒル魔やまもりのことは「好き」だが、絶対に恋愛ではないと断言した。
でもそのセナが、ヒル魔とまもりの恋人同士にも見える様子にため息をついている。

「僕の単なる勘だから。違うかもしれないんだけど。」
ため息の理由を聞いた十文字に、セナはそんな前置きをして。
そして声のトーンを落として、十文字が想像さえしていなかったことを話し始めた。
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