パラレル小話(アイシ)

□Las Vegas abduction
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え?何ですか?
セナは思わず足を止めて、聞き返した。
その瞬間、思わぬ厄介事に巻き込まれたのだが、その時は知る由もなかった。

溝六の借金返済のため、デビルバッツ全員で繰り出してきたラスベガスのカジノ。
セナはモン太とルーレットで一時はかなり勝っていたが、結局は負け。
しかしヒル魔がブラックジャックで大勝を収め、意気揚々と帰るところだった。

ゾロゾロと歩くデビルバッツのメンバー。
その列の一番後ろを歩いていたセナは、上品な年配の紳士に声をかけられた。
でもセナは「え?何ですか?」と聞き返した。
英語が苦手なセナには、全然聞き取れなかったのだ。

年配の紳士は、東洋人のようだった。
日本人にも、中国人にも、韓国人にも見える。
彼はもう一度、セナに向かって何かを言った。
だがやはり聞き取れない。

まもり姉ちゃんかヒル魔さんに聞いた方が良いかも。
セナはそう思ったが、できなかった。
突然背後から手が伸びてきて、口を塞がれてしまったからだ。
そしてそのまま軽々と抱え上げられてしまう。
こちらは大柄な人物のようだが、顔はよくわからなかった。

何で?僕が?誘拐される?
パニックに陥ったセナは暴れた。
だがセナを抱きかかえる男にとっては、大した抵抗ではないようだ。
最初に声をかけてきた年配の紳士は、その様子をじっと見ている。
つまりこの2人はグルということなのだろう。

デビルバッツの面々は最後尾のセナに気づくことなく、ホテルへ帰るべく歩を進めている。
いつの間にか黒塗りの車が横付けされており、彼らはセナを押し込むつもりのようだ。
つまり状況は最悪だ。
このままでは誰にも気づかれることなく、連れ去られてしまう。
絶体絶命のセナはさらに暴れた。
すると火事場の馬鹿力か、抱きかかえる腕は外れなかったが、口を塞ぐ手が一瞬外れた。
その瞬間にセナの目に映ったのは、カジノのネオンに映える地獄の司令塔の金色の髪。

助けて!ヒル魔さん!!
セナは思いっきり叫んだつもりだったが、その声が届いたかどうか自信がない。
何故ならその瞬間、首に何かを押し当てられたせいだ。
身体にバチッという衝撃が走り、一瞬で意識が飛んでしまった。
かくしてセナは助けを呼べた確信もないままに、あっさりと誘拐されてしまったのである。
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