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□和也バースデー
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人は自分にないものを欲しがる。

可愛さだとか、足の長さだとか、色気だとか。

あたしが欲しいもの、全てをもってるこの人が本当に羨ましい。

しかも、男で。


「なんで、怒ってんの」


「別に怒ってない」


「じゃあ、こっち向いてよ」


「嫌、」


「ほら、怒ってんじゃん」


「……」


「なにが気にくわないの?」


「気にくわないわけじゃないもん」


「俺、なんかした?」


「してない」


「だったら、こっち向いてよ」


「嫌だってば、」


本当に怒ってるわけじゃない。

ただ、彼が羨ましいだけ。
あたしのもってないもの、全部もってる、彼が。

男なのに、女みたいに可愛くて。
細長く伸びた足だって。
酔いしれてしまいそうな色気だって。


女のあたしにはない、魅力をもってる。


「ね―、」


「…なに、」


「こっち向いてよ、寂しいじゃん」


「…和さ、」


「ん?」


「…やっぱいいや」


「なんだよ―、言えって」


「…笑わない?」


「笑わない」


「…あのね、あたしね、和が羨ましいの」


「んふふ(笑)なんでよ」


「だって、あたしのもってないもの、和はいっぱいもってるんだもん」


「そんなことないと思うけどな」


「ううん、和はあたしより可愛くて、人気があって、優しくて、」


「別に関係ないよ。俺が人気があったって、好きなのはあんただけだし、優しいのもあんただからだよ?」


「……」


「だから、そんなにしょんぼりしないで?俺までしょんぼりしちゃうじゃん(笑」


「和、」


「そんなに思い悩まなくたって、大丈夫だから。あんたは、俺のもってないものいっぱいもってる。2人で1人でもいいんだよ、ね?」


「ありがと、」


「よし、じゃあ、ご飯にしよっか」


「あ、ねえ、」


「なに?」


「お誕生日、おめでと!」


「やっと、3才差ですか」


「ちょ、あたしがおばさんに聞こえるから」


「しょうがないじゃん、年上なんだから」


「も―、ハンバーグ作らないからね―」


「あ、それは…すいません、」


運命共同体
(好きだよ、和)
(ん、知ってる)




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