Glare5

□12話
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『あーあ、元同志に討たれて終わるなんてな。はは、とんだ道化師だよ…。』

『…病が治ったらきっと貴方の元に駆け付けます。ですから、ですからどうかご無事で…』

『…勇、すまん。案外早くお前と再会することになりそうだ。』

『またあの頃のように共にあれますか、ね。』



願わくばまた、あの色の元に集わんことを。







「ーっ!!」



びくり、一度だけ体を大きく跳ねさせて勇はベッドから飛び起きた。
時刻は深夜三時半、辺りは静まり返っている。
乱れた息を整えながら勇は今しがた見た夢のことを思い返した。
あの“近藤勇”と同じあさぎ色を纏った志士達の最期。
戦死、病死、老衰…逝き方はなんにせよ一様に再会を願っていた。
土方俊と土方歳三、沖田宗一郎と沖田総司、辻堂韋助と藤堂平助、山藤弌と斎藤一。
前世云々を信じている訳ではないが、もしも自分達があさぎの志士達の生まれ変わりだとしたら神はなんて酷なことをするのだろうか。
激動のバクマツではないにせよ、今はいつ本格的な戦争が起きてもおかしくはない冷戦の時。
折角時代を、世界を越えて再び出会えたと言うのにあんまりだ。
そこでふとした疑問が過ぎる。
時折見るバクマツの夢、特に今日は近藤勇に縁のある人々が出てきた。
…もしや、何か良からぬことが起こる前触れなのではなかろうか。



「いや…考えすぎか。」



頭を振って、小さく笑う。
流石の近藤勇もそこまで世話焼ではないだろう。
明日…否、今日は月神の姫君が本部に到着する予定の日だ、寝ぼけた顔でお迎えするわけにはいかない。
ゆっくりとまばたきを一つすると勇は布団に潜り込み、再度眠りに落ちたのだった。












「今日ですよねっ。今日ご主人帰ってくるですよねっ!」



身支度を整えて執務室に行けばいつになく元気なナズナとげっそりした様子の俊、そして二人を楽しげに眺める宗一郎が視界に飛び込んできた。
ナズナが俊を振り回すのはいつものことだが今日は一段と凄いらしい。
心の中でそっと合掌していると勇が来たことに気が付いた宗一郎がにこにことしながらこちらにやって来た。



「あの子がいる間はうちの副部隊長達の喧嘩もほとんどなかったんですよ。」



不思議ですよね、あんなに喧嘩の絶えない二人を大人しくさせてしまうなんて。
そんなことを言いながらナズナに視線をやる宗一郎に続いて勇もまたナズナを見る。
花の咲いたような笑顔、人形でありながらもその笑みには血の通った温かさがある。
嗚呼、何処までも無垢で不思議な少女だ。
偽りのない笑みが自分達を引き付けるのだろう。
目を細めながら微笑ましげにナズナを見つめていた時、ふいにノックの音が響き小虎の部隊の副部長、小早川しざまが部屋に入って来た。
しざまは綺麗な敬礼を一つすると用件をすらすらと言い始める。



「勇軍隊長、俊副軍隊長、小虎隊長から連絡が入りました。月神殿は既に中央部に到着とのこと、しかし瀬野川付近の裏通りにて人浚いと思われる集団と遭遇、交戦したそうです。尚、連中の、」



ちらりとナズナを見遣るとしざまは言葉を紡ぐのを止めた。
いくら軍部においているとは言え込み入った話までは聞かせられない。
しざまが話すのを止めたことで報告が済んだのだと判断したのだろう。
ナズナはしざまの腹部辺りに抱き着いて期待に満ちた表情で彼を見上げる。


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