Glare5

□お留守番戦記
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「おいデカいの、さっさとその汚い手を離しやがれですよ。」

「あ?子ぎつねがコンコン何言ってんだよ。」

「よしわかりました、おまえはぼくに真っ黒焦げにされてーんですね?」

「ハッ誰もそんなこと言ってねぇっての。子ぎつねちゃんは山で紅葉でも拾ってな!」

「てめえ…」



ご主人、ご主人、そちらでのお仕事は順調ですか?
ナズナは元気です、と言いたいところですがあまり元気じゃありません。
早くご主人のいる暗殺部隊に帰りたいです。
東方支部にお仕事しに行かれたご主人にてれぱしーなるものを送った後、ナズナは顔を上げました。
ナズナの右手は一番部隊副部隊長の杏里さまに、左手は同じく副部隊長のレオさまに握られています。
ナズナの手を取るお二方は現在ナズナの頭上で口げんかの真っ最中です。
ナズナを見る目はお優しいのにお互いを見るときの目は物凄く怖いのです、きっと土方さまだって怖がります。
この状況がしんどくてきょろきょろと辺りを見渡しましたが宗一郎さまはいらっしゃいません。
お二方共宗一郎さまを慕ってらっしゃるのであの方がいらっしゃれば助かると思ったのですが…ナズナ絶体絶命のピンチです。



「あ、あの…」

「どうしたナズナちゃん?嗚呼、この馬鹿狐がうるさいってか?ごめんなぁ。」

「失せろアホ髭。…で、どうしたの?」



阿修羅の如き形相でレオさまを睨み付けた後、杏里さまはナズナと目線を合わせるように屈んで下さいました。
ナズナを見ながら薄く笑うそのお顔がさっきの阿修羅と同じ物で構成されているなんて信じたくないです。
ぷるぷると震えていたナズナを不思議に思ったのか杏里さまはまばたきを一つすると半開きだけど大きな紅色の瞳にナズナを映しながら優しく頭を撫でて下さいました。
嗚呼、こう言う時杏里さまが兄上のようだと思います。
ナズナは人形ですし兄弟姉妹はおりませんがきっとこういう感じなのでしょう。
さて、安心したナズナですが新たな問題が降り懸かります。
…ナズナ、声はかけたものの要件を考えていませんでした。
だ、だってお二方の喧嘩を止めたかったんですもん!
ナズナ必死だったんですもん!



「ハハッナズナちゃん百面相!コロコロ表情が変わって面白ぇな。」

「レ、レオさま…」

「ナズナのことからかってんじゃねーですよ。で、さっきの話だけど腹でも減ったの?」

「あ、えと…そう、です。」



本当に何も考えてなかったので杏里さまの発言を肯定させていただきました。
嘘だってバレないかとひやひやしながら頷きましたがどうやら気付かれなかったようで杏里さまとレオさまは顔を見合わせるとナズナの手を軽く引き、歩くように促しました。
何事かと思えばどうやらどこかへご飯を食べに連れていってくれるとのことです。
あの店はどうだ、いやあの店がいーんじゃねーですか、と会話をするお二方はなんだか仲が良さそうです。
喧嘩する程仲が良いと言うのはあながち嘘ではないのかもしれません。



「あーもうお前さんと話しても埒があかねぇよ。ナズナちゃん、何が食べたい?」

「え、えと…」

「遠慮しねーでいいんだよ?レオが全部おごってくれるから。」

「あん?杏里ちゃんの分は出さねぇぞ。」

「えー!」

「んなあからさまに嫌な顔すんじゃねぇよ。つーかお前さんは稼ぎがあるんだから自分で出せや。」



不満げに頬を膨らませる杏里さまとなんだか父上のようなレオさまがおかしくてナズナは思わず笑ってしまいました。
そんなナズナを見てお二方はきょとんとした後眉尻を下げながら笑い、頭を撫でて下さいました。
心の臓があると言われる場所がなんだかぽかぽかして、幸せな気持ちがこみ上げます。
前言撤回、ナズナはこの部隊も好きです。
勿論ご主人の部隊が一番好きですがこの部隊も好きになりました。



「杏里さま、レオさま、ナズナほっとけいきが食べたいです!蜂蜜が沢山の!」

「そうか!美味いホットケーキと言ったら杏里ちゃん、勿論あそこだよな?」

「そーですね、チェシャさんとこのホットケーキが一番ですよ。」

「うっし、じゃあ行くぞ!」

「はーい!」



ご主人、ご主人、お元気ですか?
ナズナはご主人がお仕事でお出かけの間、一番部隊さまのお世話になってます。
ほわほわ優しい宗一郎さまに喧嘩ばかりだけど実は仲が良い杏里さまとレオさま、皆さまお優しい方々です。
ご主人がいなくてちょっぴり寂しいですがナズナ、ご主人が帰ってくるまで良い子にしてます。
帰ってきたらいっぱいいっぱいお話聞いて下さいね!




お留守番戦記
(やっぱりナズナ、此処が大好きですっ)
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