Glare5

□合い言葉はタルト・タタン
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ねえロア、ロアは嘘吐きだね。
だってロアはウロギのあの研究所に入る前に言ってたもん、リャオに食べられたケーキの代わりを作ってくれるって。
確かに言ってたよね、ウチ覚えてるよ。
なのにロアはいなくなっちゃった。
ウチの歌で、いなくなっちゃった。
お姉ちゃんみたいなロアにお願いされたら断れる訳ないじゃない。
歌は好きだけど、あの歌を歌うのは辛かった。
ねえ、本当にあれしか選択肢はなかったのかな?
ずっとずっと昔はジュイ様と闇神子は仲が良かったって言うからそんな日がまた来たとしたら二人は消えなくても良かったんじゃないの?
もう少し時が経ってたら全ては違ってたかも、ロアが消えずに済んだ未来があったかもしれない。
なんて、今言ったところで何も変わらないんだけどね。

…ねえロア、哀人の君がウチみたいな諱を知れば時之輪に還ってしまう死神よりも先に消えちゃうなんてあんまりだよ。
もっともっと話したかった、ロアと一緒にいたかった。
あのね、いつも思ってたんだけどロアが作ってくれるタルト・タタン、実は生きてた時にママが作ってくれたものよりも美味しかったんだよ。
ロアのタルト・タタンだぁい好き、ロアのことはもっと好き。
死神にとって別れなんて日常茶飯事だけどしばらくはタルト・タタンが食べられそうにないや、あの味と香りにはロアとの思い出があまりにも溢れてる。

ロア、ロア、今幸せですか?
旦那様と再開して、一緒に沈んでいった闇の中で何を思ってる?
ウチは誰かと愛し合える程大人になる前に死んじゃったから愛とかいまいちよくわかってないけど、旦那様を抱きしめた時に流した涙は旦那様を愛してたからなんだろうね。
意識も存在もない空っぽの世界に二人、なんだか矛盾してるけど君達はそこにいる。
君とはもう二度と会えない、いつかウチが諱を思い出して"モミジじゃないウチ"になったとしたらロアのことを忘れちゃうのが怖い。
生まれ変わったら今感じてることも記憶も全部有無を言わさず白紙にされちゃうんだもの。
それが再生、誰も逆らえない。
真っ白になる日がいつ来るのかはわからないけどもしも一つ願ってもいいのならば、ウチはタルト・タタンが大好物な子に生まれたい。





合い言葉はタルト・タタン
(そうすれば記憶を失ってもロアと繋がっていられるでしょう?)
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