Glare4

□灰色の少年
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「久し振りだね、ここに来たのも…」



ただいま、皆。
時雨は目を細めながらそっと呟いた。
烙舞に会うべく風祭の里から旅立った時雨達は一番にこの土地、月神の里の跡へとやって来た。
何もかも、変わってしまった故郷の土地だが懐かしくて涙が零れそう。
家屋の残骸などももうほとんどが風化してしまったが僅かに残っている瓦礫の隙間からは草木が成長し始めていた。
この場所には沢山の思い出が土を被って眠っている、良い思い出も悪い思い出も。



「時雨、緋影様の墓のある丘へ行こう。旅立ちを報告せねば…。」

「…うん。」



時雨は真人越しに緋影の墓のある丘を盗み見た。
優しげな笑みを浮かべた緋影と閃架の姿が蘇る。
大好きな兄と、師として尊敬していた兄の龍。
拳を握り締め、小さく頷くと時雨は口を開いた。



「…そうだね、兄様と閃さんに報告しよう。」



泣かない、そう決めたんだ。
泣いたところで何も変わらないことを時雨は嫌と言うほど理解している。
涙よりも、前に進む強さを。
時雨が静かにそう考えているとふいに風音が小刀を取り出し辺りを見回し始めた。
疾風の空色の瞳に警戒の色が滲む。


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