Glare3

□籠の鳥
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初めての仕事からしばらくの月日が流れた。
死神として必要な力も身に着いた僕は最近では単独での仕事も任されるようになって来た。
そんな僕の新たな仕事、それはとある魂を運ぶことだった。



月夜、響く音は心地良く
涙、零れ落ち海を創る
風の、鎮魂歌を聴きながら
私は風化する



「…こんばんは。」

「…―っ!」



畳張りの部屋の中には小さな窓から外を眺めながら心に直接響いて来るような声で歌う女の人、僕が背後からそっと声を掛けると女の人はびくりと肩を揺らして振り返った。
歳は20を過ぎたくらいだろうか。
光の当たり具合で若干金色に輝く鳩羽色の柔らかな髪は高い所で結われ、緩くウェーブがかかっている。
翡翠色の瞳は若干切れ長で、目元を彩る赤と紫が加わって艶やかさを醸し出していた。
昔出会った悪魔、ルチカとは違う美しさ。
それは彼女の纏う哀しげで儚げな雰囲気からだろうか。
僕がそんなことを考えていると彼女は紅の引かれた口を開き、思わず聞き惚れてしまいそうな声で言葉を紡いだ。


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