Glare4

□紙面上の怪物
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それからはあっと言う間だった。
最初は驚いていたものの小虎も小虎で諦めが付いたのかテキパキと準備を済ませて東方支部へと出掛けていった。
小さくなっていく小虎の後ろ姿を窓越しに見送った後、執務室に漂う静寂を崩すように勇は口を開く。



「…明智支部長は一体何を思って生物兵器の製造を始めたのだろうか。」

「科学者の意向なんぞ俺にはわからねえよ。だが人工的に生命を生み出すってのは科学者の永遠の夢なんじゃねぇのか?」

「科学者の夢と戦争、これらが合わさった結果が生物兵器と言うわけか。」



机の上に放置していた資料をちらりと見る。
開いていたページは丁度生物兵器に関することが記載されていた。
K-LL4、戦闘能力に加えて自己治癒力も高い。
何故か右目の周囲のみ人工皮膚が異常を来してしまい何度作業を繰り返しても爛れてしまうと言う。
醜いがその他の能力は良好とのこと。
資料に並べられた文字に勇は顔をしかめた。
生物兵器として生を受けたとしてもこの世に存在していることには変わりない。



「戦うためだけに生まれた存在、か…。」

「勇、感情移入なんかすんなよ。K-LL4が科学者の奴らをぶっ殺したことは紛れもない事実なんだ、俺らがあいつらの二の舞になることだって十分有り得る。」



零した言葉で俊は勇の考えていることがわかったのだろう。
いつもよりもいくらか強い調子で俊は言葉を紡ぐ。
勿論、俊のそれは自分の身を案じてくれているからだとはわかっていた。
だからこそ勇は何も言えなかったのだ。
勇は再び資料を一瞥すると小さな声で低く嗚呼、と呟いた。





簡単に割り切ることが出来なかった





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