Glare4

□紙面上の怪物
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「龍使いの生き残りが…ここに来る?」



信じられない気持ちでいっぱいだった。
五年前に里の住人全てが一夜にして亡き者になったはずのあの事件は確かに不可解な点が多かった、しかしまさか生存者がいるとは思わなかった勇は心中驚きで溢れていた。
龍使いと術師の一族は他種族との交流をあまり好まないため龍使いの里が滅んだときも情報が入ってこなかったのだ。



「しかし俊殿、何故今頃になって生存がわかったのでしょうか?」

「生き残りは15歳の餓鬼だそうだ。つまり事件当時はほんの10歳、行動を起こすにも起こせねぇし…恐らく術師の里にでも保護されていたんだろう。あの族長のことだ、情報が漏れねぇようにしてたんだろうよ。」



あの野郎には敵わねえな。
眉間に皺を寄せたまま俊は静かに首を振った。
あの野郎こと術師の風祭一族の族長を務める麻風影人は歴代の族長の中でも頭の切れる人物であり、東軍でも要注意人物として一目置かれていた。
現在は族長の座を退き補佐に回っていると言うがその情報も確かかわからない。
当時どんなに情報提供を要求しても情報収集力に秀でた小虎の部隊の要員を派遣しても風祭一族では何一つ情報を得られなかったため苦い思いをした俊はどこか疲れた様子で口元のピアスを一撫でした。



「麻風影人は先々代族長である麻風夜信の孫だ。夜信の代と言ったら東西戦争が一番激しかった時期で他種迫害の意識が強かった頃のはず、その孫が人間に対して警戒すんのも無理はねえだろうさ。しかし…そんな奴が情報を隠すのをやめた、そこが俺としちゃ気になる部分なんだよ。」

「連絡を受けたのは東方支部、あそこの支部長は確か風祭一族の出身だったな。これにも何か訳があるのだろうか…。」

「さあな。その辺りのことは小虎に任せるとしようぜ。…小虎、すぐに支度をしろ。」

「お、俺ですか!?」



突然名前を呼ばれて驚いた小虎は目を丸くして素っ頓狂な声を上げる。
いきなり話を振られれば当然の反応だがそんな小虎にお構いなしで俊は半ば追い出す形で小虎を準備に行かせた。



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