Glare4

□開口的ウィル
2ページ/3ページ


「グレアには恩人も友人もいる、そんな世界を見捨ててたまるか。」



頭の中で彼らを思い描きながらゼロは言う。
得体の知れない自分に居場所を作ってくれた人々の世界に危機が訪れていることを知っているのに行動に移さないだなんてゼロには考えられなかった。
対するアドミニスは真っ直ぐに自分を見据える男装少女を見てまばたきを一つしてから眉尻を下げ、苦笑に似た笑みを浮かべる。
思えばそれを誰かに見せるのはこの世界が生まれた頃以来かもしれない。
自分の表情に驚きながらもアドミニスは笑みを形作っていた。



「…お前、笑ったりするんだな。」

「失礼だね、これでもワタシは表情豊かなつもりだよ。」

「……。」



再び無表情に戻ったアドミニスはどこか不機嫌な声色で言葉を紡ぐ。
ゼロはアドミニスの発言にひきつったような笑みを浮かべると再び周囲に視線を移した。
自分に出来る限りのことはするつもりだ、しかしグレアに帰れなければ意味がない。
辺りを見渡す限りそれらしいものが見当たらずゼロは無意識に眉間に皺を寄せ始める。
ゼロの心を読んだのかはたまた溢れんばかりの苛立ちを感じ取ったのかアドミニスは静かに口を開いた。



「ゼロ・エンプティ、グレアへの入り口はこれだよ。」



言いながら指を鳴らせば彼岸花が踊り出し、たちまち一つのアーチとなった。
目の前で起こった出来事に驚いて声を失うゼロを一瞥してからアドミニスはアーチに歩み寄り、アーチの一部を優しく撫でる。
血のように赤い彼岸花と青白いアドミニスの肌の組み合わせは酷く異質でいて美しかった。
茫然とその光景を見ていたゼロだったがやがてとあることに気付く。
…アーチの中が、歪んでいる?





.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ