Glare4

□骨の剣
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「もう一度聞きます、退いていただけないのですか?」



はっきりとした時雨の声が響く。
サイレンスは禍々しい刀を手にして凛と佇む目の前の少女が恐ろしくてたまらなかった。
しかしそんなことを口に出来るはずがない。
プライドが高いサイレンスは眉間に皺を寄せながら拳を堅く握った。



「…何を言ってるの。ねぇお姫様、私達は三強なのよ?退く訳無いでしょう?」



貴女の妙な自信もろとも、この世から消し去ってあげる。
サイレンスは体制を低くしたかと思うと次の瞬間には姿を消した。
全くの無音、どこから攻めてくるかなどわからない。
しかし時雨は焦りもせずに空を仰いでいた。
無防備な時雨の背後に詰め寄るとサイレンスはナイフを降り下ろした。
…その時、



「…っ…!?」



鋭い痛みが腹部に走った。
声にならない声を上げながらサイレンスは数歩よろめく。
今のは、なんだ?
全てを見切れるはずなのに、攻撃の兆候すら見えなかった。
おかしい、おかしい、お姫さまは指の一本に至るまで動いていなかったはず。
…となるとやはりあの刀、なのだろうか。
腹部に手を当たればずくんと痛みが走ると共にぬるりとした血の感触が感じ取れる。
背中だけでなく腹部にも攻撃を受けてしまった悔しさと久しぶりに感じる痛みにサイレンスは目を細めた。

死神と悪魔の関係ほど正確ではないが闇人は生と切り離された存在からの攻撃でないと傷を負うことはない。
否、負ってもすぐに再生してしまうのだ。
ただの刀だったら持ち主の持つ生気のせいで攻撃は無力化されるはずだが無力化されずにこうやって傷が残ってしまったのだからあの刀には特別な何かが施されているのだろう。
浅い呼吸を繰り返しながら思案するサイレンスの耳に落ち着いた時雨の声が響いた。



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