Glare4

□題名、世界
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「…一ヶ月、か。」



執務室で勇は一人、呟いた。
ナズナが此処、東軍本部の一員になってからもうすぐ一ヶ月が過ぎる。
初めは小虎や律にくっ付いていたナズナだったがもうすっかり慣れたようで今では宗一郎と韋助と共に俊に悪戯をしに行くほどだ。
東軍に慣れたのは良いがお騒がせコンビの妹分となってしまったことをほんの少し悔やんだ。
…嗚呼、小虎の胃に穴が開かなければいいが。



「失礼します。」



噂をすれば何とやら。
ノックの音に続いて入ってきたのは小虎、胃薬をプレゼントするか真剣に考えていた勇は小虎を見た途端思わず笑ってしまった。
突然笑われた小虎は不思議そうな表情を浮かべたがそれも一瞬で、大して気にした様子無く勇の机の上に書類を置く。



「南部に派遣していた部下が先日帰ってきました。南部の研究所についてはそちらに記載してあります。あとは北方支部でいただいた資料も同封しました。」

「北方支部…?何故急にそこへ行ったんだ?」

「支部長のアコニットマン殿は博識な妖魔でいらっしゃるので過去にあった出来事などを教えていただいたのです。」

「なるほど…確かに俺達人間よりも妖魔の方が何倍も長生きだし資料を見るだけよりもわかることがあるかもしれないな。」



小虎の言葉に相槌を打ちつつ机に置かれたA4サイズの紙の束をパラパラとめくる。
最近の南方支部の人数やスケジュール、研究所周辺の治安状況や科学者の人数、研究内容その他が事細かに述べられ、最後の方には違う質の紙に北方支部で得たのであろう情報が小虎のかっちりとした文字で書かれていた。
わかりやすいように工夫されている資料を見る限り、姿勢正しく佇んでいる目の前の人物が昔は手に負えないような問題児だったとは思えない。
時の流れとは凄いものだと思いながら資料をめくっていた指はある一説を目にしたときぴたりと止まった。



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