Glare4

□風車のうた
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「ナズナ…?」

「ご主人、これ…ご主人にあげるです。」



ご主人、いつもありがとうございます。
声と共に差し出されたのは黄色い風車、綺麗な柄が描かれたそれはナズナが好きそうな可愛らしいものだった。
対するナズナは同じ柄の緑色の風車を大事そうに両手で持ちながら嬉しそうに笑っていた。



「あっちのご主人には色々なものをもらってばかりでした。だから…今度はもらうだけじゃなくてナズナからも何かをあげたいって思うんです。」

「…。」

「ナズナ、この世界好きです。たまに寂しくなっちゃいますけどご主人、小虎さま達がいるから大丈夫で、」



ナズナの言葉の続きは小虎の服に吸い込まれた。
小虎はナズナを思い切り抱きしめると何度も何度も頭を撫でた。
ナズナにはもう沢山のものをもらっている。
任務でへとへとになって帰ってきたとき、花が咲いたような笑顔を浮かべながらナズナが抱きついてくるとどんなに疲れていても元気が出てくるし人形のくせに食欲があって、しかもよく食べるこいつの食べているときの幸せそうな顔を見てるとこっちまで幸せになったり…。
今だって自分勝手な不安を抱えている俺を見ながら柔らかく笑ってくれているではないか。
それだけでいい、それだけでいいんだ。



「ご主人!ナズナの話を最後まで聞いてくださいよっ。」

「ああ、ごめんな?」

「な、なんかご主人偉く機嫌いいですね…や、機嫌いいのはナズナも嬉しいんですけど。あ…ねえご主人、」



ちょっと屈んでくれませんか?
若干もじもじしながら訊ねてくるナズナを見て不思議に思いながらも小虎は言葉通り屈んでやる。
180cmを超える小虎と140cmにも満たないナズナではいくら屈んでも小虎の方が高くなってしまう。
もっと屈んだ方がいいのだろうか、と中腰のまま悩んでいるとふいに視界にナズナが映った。
直後、可愛らしい音と共に頬に感じた柔らかい感触に小虎の思考は停止する。
突然の出来事に放心した様子の小虎を見やると背伸びをしたナズナは眉尻を下げて照れたような笑みを浮かべながら言った。



「だあい好きです、ご主人!」





風車のうた
(だから、ずっと側にいてくださいね)
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