Glare4

□劇場マリオネット
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「この歌…あのメロウと言う女性はもしや"フェアリーテイル"の戦う眠り姫?まさかフェアリーテイルまでもが動き出すとは。」



リッカさんはきっと信じられないのだろう。
しかし無理もない、僕だって彼女が戦う眠り姫だとは思いもしなかった。
戦う眠り姫、暗殺集団フェアリーテイル一暗殺を得意とする裏社会の花。
生まれ持った能力と巧みなナイフさばきによって標的を永久の眠りに誘うためこの異名が付けられたのだと言う。
正直なところ、僕はフェアリーテイルの人達にまともな思考を持つ者はいないと思っていた。
殺しを生業としている彼らが、一人の為に必死になって烙舞を探していることには驚きを隠せない。
しかしメロウの、否、戦う眠り姫のあの慈愛に満ちた表情を見たら今までの僕の考えは払拭された。
大切なんだ、血濡れの無垢が。
たとえ死神に干渉しても、命の危険にさらされても血濡れの無垢のために殺戮を続ける生物兵器を見つけようとしているんだ。
ずきん、ずきんと頭が痛みを訴える。
それと共に脳裏に響くのは最愛の妹の声。
気が付いたら僕は黄泉達を引き留めていた。



「…待って下さい。本当に烙舞を探すのですか?」



震えるような声が口から零れ落ちた。
本当に烙舞を探すのか、この短い言葉のなかに沢山の思いを込める。
どうか、どうか…。
言葉に出来なかった僕の気持ちは彼に伝わったのだろうか?
黄泉はゆっくりとまばたきをしてからはっきりとした声色で言葉を紡いだ。



「探す。例え、生物兵器の闇を見ることになっても構わない。」

「ならば僕は止めません。…リッカさんだってそう考えてるはずだ。」



ちらりとリッカさんを見る。
リッカさんは柔らかな笑みを浮かべながら頷くと一歩前に出て黄泉と茜を交互に見てから口を開いた。



「そうだね、そこまでの決意があるのなら俺も止めない。…黄泉、それに茜。烙舞は死神の間でも良くない方面で有名だ、そんな彼に会いに行って無事でいられるか分からないが…応援しているよ。」








黄泉達と別れた後、僕達は一言も話さずに空間の狭間を歩いた。
いや、話せなかったと言った方が正しいかもしれない。
リッカさんはどうかわからないけど少なくとも僕はあまりにも聞きたいことがありすぎて話すことが出来なかった。
もやもやとした何かが胸の奥底で渦を巻いている。
この時、もう既に僕は歴史を揺るがすある一つの出来事の始まりを察していたのかもしれない。
世界を巻き込んだ物語は既に始まりを告げていたのだ。





次に安らげるのは、全てが終わった時





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