Glare4

□劇場マリオネット
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「あら…やぁね、面白い顔しちゃって。」



くすくすと笑い声を響かせながら紅色の唇が弧を描く。
目の前の女性は全てを見透かしたような瞳で僕達を見やると恭しく礼をした。
りぃん、彼女の首飾りが小さく歌う。



「あたしはメロウ、今日はあんた達にちょこっとだけ情報を提供しに来たの。」

「情報…ですか?」

「えぇ。あんたと…黄泉、あんたに関係することよ。まあ…さっきも言った烙舞のことだけど。」



僕と"あいつ"にそっくりな黄泉を順々に指さしながら術師の女性、メロウは言った。
…メロ、ウ?
やけにこの名前が引っかかる。
死神になる前にもなった後にもそんな名前の知り合いが出来た覚えはない、だけど確かに知っているんだ。
…一体、どこで聞いた?



「まず、烙舞のことね。烙舞って言うのはあんたよりも先に作られた東国の人型生物兵器の名前よ。…もっとも、烙舞って呼んでたのはごく一部だけど。」

「その生物兵器がヨミーとどう関係があるって言うの?」

「美人のお姉さんの話は最後まで聞くものよ、狐君?…烙舞は当時、唯一作成に成功した生物兵器だったけどある事件を境に科学者数人を殺して脱走したの。残ったのはたくさんの未完成の生物兵器と烙舞を作った博士の遺品である資料の一部だけ。生き残った科学者は僅かな資料を参考にして未完成だった黄泉を完成させようとした。」

「…その博士の遺品である資料を用いたから俺と烙舞と言う奴の顔は似ているのか。」

「つまりはそうね。」

「でも…なんで死神と烙舞に接点があるの?」

「生前に出会っているからよ。龍使いって一族を知ってるかしら?このネオンって子はその一族の者だったってこと。」



…なんで、それを知ってる?
僕が龍使いの一族だっただなんて見た目だけではわからないはずだ。
それに、見た目だけでなく共に生きていた龍だって今はいない。
龍使いだとわかる要素は何一つないんだ。
ただ動き続けるだけの心臓が早鐘を打つ。
やめてくれ、これ以上僕を惑わさないで。



「え、龍使いって数年前に滅んだ一族だよね?じゃあネオンさんは…」

「烙舞に殺されて、死神になったのよ…っと!」



一閃、銀色が煌めいたかと思うと直ぐ様破壊音が響いた。
はっとして顔を上げれば目の前には見事なまでの亀裂が出来ていた。
亀裂の中心にあるのは闇色をしたリッカさんの大鎌。
リッカさんは今まで見たことがないような殺気を放ちながら僕を庇うように一歩前に佇んでいる。
そんな殺気を受けているにも関わらずメロウの飄々とした態度は変わらなかった。



「…やぁね、死神長さん。そんな熱烈なラブコールされてもあたし恋人いるのよ。」

「生者と死神は必要以上の干渉も情報提供も禁じられているはずですが…?」

「そんなに怒んないでよ、あたしはただ可愛い可愛い妹分のために働いてるだけなんだからさ。血塗れの無垢、死神なら聞いたことあるでしょ?」



血濡れの無垢。
闇色兎と呼ばれる人物が創り出した世界一奇異な死人の間の子供。
生と死を混合させてしまった彼は今、死神からも悪魔からも追われている。
言わばアリスは大罪の元に生まれたのだ。
そんな彼女が烙舞と関係したなんて思いもしなかった。



「烙舞は今もまだ殺戮を続けてる。そして烙舞、血塗れの無垢、龍使いの一族の滅亡…全ては"彼"に繋がってるわ。今あたしに言えるのはこれだけ。黄泉、ネオン、死神長さんに狐君。」



頑張ってね、ごきげんよう。
凛とした声が響いたかと思うとメロウの体は見る見るうちに足下の影に包まれていく。
暗い暗い闇色に完璧に包まれる直前、辺りには一つの歌が響いた。




御伽話はもう終わり、青い鳥は地に墜ちた

貫く色は漆黒、闇夜が全てを包み込む

カラスからの招待状、死出の旅までもう少し

我らが言葉を贈りましょう

さようなら、真っ赤な夢を召し上がれ






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