Glare3

□新兵に告ぐ
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「吾妻総統、お疲れ様でした。」

「…凜藤か。」



東雲国軍隊…通称東軍の入隊式終了後、国内最高権力者である吾妻律は部下にあたる東軍総隊長の凜藤勇に声を掛けられた。
白い軍服を翻し、紫色をした切れ長の目が勇を映す。



「愛する者を守る為に死ぬ…それを願う者も年々増えて来たな。」

「昔に比べれば、そうですね。」

「少しは遺される者の気持ちも考えてはくれないものかな。」



そう呟く律の脳裏に浮かぶのは死体を抱いてしゃがみ込む少女、幼い頃の自分の姿だ。
十数年前、律には憧れの人がいた。
律の従兄弟に当たる人物で当時の東雲国軍隊で一番部隊に所属していた軍人だ。
特別上の位に就いていない彼だったが彼の考えの賛同者は多かった。
"死は悲しみしか生まない。"
彼は何度も訴えていた。
しかしそんな彼もある時戦地へと赴き、戦死した。
彼の亡骸が届けられた時は声をあげて泣いたものだ。
律は小さく溜め息をこぼした。



「…吾妻総統、兵士達は死なせません。この凜藤勇、私自身にも愛する者はいます。だからこそ愛する者を持つ兵士を、いや…すべての兵士を私達は全力で守ります。」

「頼もしいな…流石は東雲国軍隊総隊長。」



恋人は確か…山崎琴音と言っただろうか。
彼女は物腰も柔らかく気立ての優しい子だった。
そんな彼女がいて君は幸せ者だよ。
声にしなかった言葉が心の中で響いた。
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