Glare3

□墓場のアリア
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「また…来てしまいました。」



東国中央部の外れにある小さな墓地に猫ことチェシャ・ミステリアは来ていた。
真夜中だからか墓地には全く人気が無い。
時折風が吹き、周囲の木々を揺らすだけだ。
葉と葉がこすれる音を聞きながらチェシャは寄り添って並ぶ二つの墓石を愛しそうにそっと撫でた。
近くにたたずむ墓石よりも幾分か新しいそれに刻まれた文字は友人と、友人の妻の名前。
三人で過ごした幸福の日々を思い返して猫は寂しそうに目を細めた。



「ゲイル、小春さん。今日で5年が経ちますね…。」





『チェシャ、後で一緒にお茶でもしないか?』

『ゲイルったら家ではチェシャ君の話ばかりしてるのよ。』






脳内で暖かい声がよみがえる。
妖魔であるチェシャを敬遠することなく接してくれた愛すべき二人の友人は5年前の今日、別々の場所で銃弾に散った。
息子のように可愛がっていた生物兵器と共に暮らそうとしたことを周囲の科学者に知られ、撃たれたのだ。
チェシャの聞いた話だと生物兵器との生活は上部の許可を取っていたらしいが、ならばどうして二人は死ななければならなかったのか。
今となってはもう分からないことだ。
チェシャは小さく頭を振った。



「そういえば彼女との出会いもこの場所でしたね。…アリスは本当にお二人にそっくりですよ。」




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