Glare3
□後ろの正面だぁれ?
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「あたしはメロウ・フラインって言うの。坊やはなんて名前なの?」
「し…しろろ。」
「そう、しろろ。…突然で悪いけど貴方何者?あたしの背後なんてそう易々ととれるもんじゃないのよね。」
「……しろは影だよ?」
みんなの影はしろで、しろはみんなの影なの。
真っ直ぐにメロウを見つめながらしろろは言う。
メロウはと言うと若干目を丸くして驚いていた。
それもその筈、自らを影だと名乗る人物など初めて見たからだ。
しかし頭の片隅に追いやられていたいつか後ろ神についての文献を読んだことを思いだし小さく声を漏らした。
メロウは不安そうに自分を見上げるしろろの頭を優しく撫でるとパチンと指を鳴らした。
それと共に足下の影が踊りだす。
しろろは驚いてメロウを見上げた。
「メロウ!影…動いてる!」
「あたしは術師だからね。」
「術師…?」
「種族の一つよ。人それぞれだけど…術師は自然界に存在する力を操れるの。あたしは見ての通り影ね。」
「影使い…。じゃあメロウはしろのかあさまなの?」
何言ってるの、そう突き放した方が楽だったろうか。
しかししろろの縋るような目を見ていたらそんなこと言えなかった。
ためらいがちにそっと抱き寄せるとしろろは腕の中で実をよじりながら幸せそうにかあさまと呟いた。
恐らくこの小さな後ろ神は自我が芽生えてから日が浅いのだろう。
まるで母からの愛を欲する子供、自分の存在を認めて欲しくて必死に見えた。
メロウはしろろを抱き締めたまま言う。