Glare3
□後ろの正面だぁれ?
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「後ろの正面だぁれ?」
しろろは後ろ神、ありとあらゆるものの影。
この世に自我を持ってから今に至るまでしろろは何百回も道行く人に問い掛けたが誰も答えてくれる人はいなかった。
全員背後に突然現れたしろろに驚き、一目散に逃げてしまうからだ。
残されたしろろは一人、寂しそうに俯くと闇に溶ける。
そんな日々が続いていた。
「行かないで…しろ…サビシイ。」
今日も逃げられてしまった。
薄暗がりの中、しろろはぽろりと涙を零す。
涙の筋を風が撫でてひんやりと冷たい、そんなことを思っていると背後からカツカツとブーツの音がした。
しろろはごしごしと服の袖で涙を拭うと近くの影に飛び込み、音の主の影へと移った。
「後ろの正面だぁれ?」
「…坊やこそだぁれ?」
女性特有の高めの声が響く。
返事が来たことに驚いて見上げれば綺麗な群青色の目と目が合った。
なんて返事をすればいいのだろうか、戸惑っていたら女は艶っぽく笑いながらしろろの目線に合わせて屈んだ。