Glare3
□宣誓、あなたを愛します
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赤い、紅い、壱の体。
壱の暖かい血があたしにかかる。
髪の毛、頬、胸元、腕、全部。
必然的にあたしも赤く染まる。
あたしの頭の中では今の現状をきちんと理解することが出来なかった。
壱が、刺された?
ゆっくりと壱の体は倒れて行く。
あたしはどうすればいいのかわからなくて地面に伏した位置を抱き抱えて何度も名前を呼んだ。
「壱…壱!」
呼吸が荒くて、苦しそう。
それでも壱はあたしと目を合わせるとへらりと笑ってみせた。
無理しないでよ。
気が付けばあたしは涙を流していて、壱の頬を濡らしていた。
涙を流したのなんて何年ぶりだろう。
懐かしくて涙をとめる術を忘れてしまった、あたしは年甲斐もなく声を上げて泣いた。
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「泣か、ないで…。」
壱の骨張った指があたしに伸びて来て目尻の涙を拭っていく。
泣かないで、だなんて泣かせたのは他でもないあんたよ。
馬鹿、馬鹿と心の中で何度も叫んだ。
「な、お願い…あるん、す。」
「お願い…?」
「キス、し…てくれねぇ、すか?」
いつも壱が茶化しながら言う言葉も今日はなんだか本気に見えた。
あたしが戸惑ってる間にも壱の体からは血と生気が流れ出て行く。
もしかして、壱はこのまま…嫌だ!
あたしは脳内に浮かんだ最悪の事態を振り払って壱に口付けを落とした。
いつもよりも冷たい唇、壱の血の匂いと味。
壱は幸せそうに微笑むと眠るようにあたしに全ての体重を委ねた。
…待ってよ、鼓動が速くなる。
さっき浮かんだ考えがぐるぐると渦巻く。
「壱?ねぇ、壱起きてよ…ねぇ!」
返事は無い、優しく体を揺する。
それでも壱は動かない、目を開けない。
嘘でしょう、いつもあたしが壱のこと困らせるからそんなことするんでしょう。
ねぇ、笑えない冗談なんかやめてよ。
こんなの嫌だ、やめて、やめてよ。
「い…いやぁぁぁぁあ!!!!」