Glare3

□チョコレートフォンデュ
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「ご注文は何で…。」



言葉は最後まで続かなかった。
ふわり、キゼに抱き締められたかと思うと深く口付けられた。
馬鹿、人前で何をするのさ。
僕に仕事中だって言ったのはキゼじゃない。
言いたいことが次々と浮かぶけど一向に離してくれそうにない。
そろそろ息が苦しい、そう思い始めた頃になってキゼはやっと解放してくれた。
辺りを見れば目を丸くするカップルと顔を赤くするイカレ、呆れ顔の猫に新しいおもちゃを見つけたような笑顔の眠り。



「キゼ、注文はアリスをお持ち帰りでいいかしら?」

「ああ、よろしく頼む。」

「じゃあ今日はバレンタインだしチョコレートフォンデュもおまけに付けとくわね。」



静まり返った店内で一番に口を開き、動き始めたのは眠りだった。
眠りはたった今焼きあがったばかりのチョコレートフォンデュを2、3個袋に入れるとキゼへと渡す。
キゼは無言のまま受け取ると僕を担ぎあげ、ドアノブに手を掛けた。
…え、ちょっと待ってよ。
よろしく頼むとか僕許可してないし。
それに眠りも何手を振りながら僕のこと見てるんだよ。
だけどキゼは何食わぬ顔で外に出て行く。



「ハッピーバレンタイン、お二人さん。」



ああもうどうにでもなれ。
嬉しそうな眠りの言葉は聞こえなかったふりをした。





甘くて苦い、ほわほわまるで恋の味





END.
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