Glare3
□ムスカディーヌ
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「すげぇ…。」
紅瀬名のオッドアイが目の前のお菓子を映す。
菓子名はムスカディーヌ、さっきまでリッカが本と睨めっこしながら作っていたものだ。
上司であるジュイに甘党であることがばれて馬鹿にされて以来しばらく作らなかったがリッカの料理の腕は確かなもの、癖の無い甘い香りが紅瀬名を誘った。
「朱雀のために俺…結構頑張ったんだよ?」
「見りゃわかる。そっか、ユキ俺のために作ってくれたのか…。」
小さく呟く横顔は嬉しそうだった。
ああ、こんな顔をされたら俺は"ユキ"から"死神長のリッカ"に戻れないじゃないか。
リッカは幸せそうに溜め息を吐く。
いつもは紅瀬名とリッカ、二人で会う時は朱雀とユキ。
そう呼び合うのが二人の約束だった。
基本忙しい二人が会えるのはほんの僅かしかないがたとえ僅かでも嬉しくて仕方が無かった。
そして今日、都合が合った二人は会う約束をした。
リッカがムスカディーヌを渡したのは久し振りの再会を果たした直後のことだった。
「今日はバレンタインだし、ちょうどいいかなって思ったんだ。」
「そっか…ありがとな。」
軽い口付け。
冬の風にあたって冷たくなっていた唇は急に温かくなる。
そんな些細なことが幸せで堪らない。
珍しく自分から朱雀に抱き付きリッカ…否、ユキは言った。
「ハッピーバレンタイン、朱雀。」
あとでチョコの感想を聞かせてもらうよ
END.