Glare3

□ブラウニー
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お菓子作りは大変だった。
何度も失敗しちゃったからその度に猫さんに教えてもらいながら新しくやり直した。(イカレさん、なくなった材料を買いに行かせてごめんね)
でも日が傾き始めた頃、ついに完成した。
僕が作ったのはブラウニー。
猫さんがこれなら作りやすいと思うって選んでくれたの。
甘い匂いが充満するキッチンで僕は小さく笑って呟いた。



「氷狐、喜んでくれ…るかな。」

「もちろん。」

「!?」



独り言に返事があった。
僕の心臓はどきりと跳ね上がる。
振り向けばにこにこと笑う氷狐の姿。(猫さんが呼んでくれたのかな、後でお礼を言わなくちゃ)
氷狐は僕の前まで歩いて来ると屈んで僕に目線を合わせた。



「これ、セリが作ったんだろ?」

「え…う、ん。」



僕の手にはさっき作ったブラウニー。
氷狐は何か思い付いたような笑みを浮かべると僕を抱き上げた。
ふわりと浮く感覚、僕は思わず声をあげたけどそんなことお構いなしに氷狐は言う。



「食べさせて。」



僕には食べさせるって言う選択肢しかないみたい。
物凄く、物凄く恥ずかしいけど我慢して氷狐の口に一口サイズのブラウニーを放り込む。
氷狐は満足そうに口を閉じるとブラウニーを味わった。
その間も僕は氷狐に抱き上げられたままで降ろしてもらえなかった。
だけど、ブラウニーを頬張る氷狐はなんだか幸せそうで作ってよかったなって思えた。
まだ口をもごもごさせてる氷狐に向かって僕は自分の中で一番の笑顔を作って言った。



「氷狐、ハッピーバレンタイン…。」





初めての手作りお菓子はお気に召しましたか?





END.
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