Glare3

□月光蝶
2ページ/3ページ


月が淡い光で辺りを照らす。
昼間とはどこか違う幻想的な空間にアリスは何も言わずに佇んでいた。



「アリス…こんなところにいたのか。」



ふいに背後から聞こえた声。
さくさくと枯れ葉を踏む小気味いい音を響かせながらキゼはゆったりとした歩みで現れた。
声を掛けても返事はない。
ただ代わりに鼻を啜るような小さな泣き声が聞こえただけだった。

小さな背中だ。
声を出来る限り抑えながら泣くアリスを見て思った。
アリスはもともと華奢な方だが月明りのせいか、はたまた泣いているせいかより一層小さく見える。
あまりにも小さく脆く見え、まるで消えてしまいそうでキゼはアリスに近付くと後ろから強く抱き締めた。
抱き締めたアリスはひやりと冷たい。
しかしただの冷たさではない、いつものアリス独特の冷たさだった。
抱き締められて我に返ったアリスは涙に濡れた淡いオレンジ色の瞳にキゼを映し、口を開いた。



「キゼ…探してくれてたんだ。」

「当然だ。」



どれだけ心配したと思ってる。
アリスの肩口に顔を埋めながら言う。
珍しく弱々しいキゼの言葉にアリスは何も言わずに透き通るような空色の髪を撫でた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ