Glare3

□君とふたり
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「……。」



ぽかぽか、そんな擬音を当てはめるのがいいだろうか。
小川のほとりにいたセリは柔らかな日差しに目を細めた。
暖かい気候はすぐそばまで来ている春の訪れを予感させる。
草木が芽吹く様子を脳裏で描いたセリは小さく笑みをこぼした。



「セーリッ。」

「…!ぁ…氷狐。」



聞き慣れた声が響いたかと思うと後ろから抱き締められた。
抱き締めて来る人物が誰だかわかっても若干驚くのは仕方がないものだ。
セリは翡翠色の瞳を丸くさせる。
氷狐は後ろから覗き込むようにセリを見るとにっこりと笑い、抱き締める力を強くした。
とくんとくんと背中から伝わる氷狐の鼓動が心地良い。
セリは目を細めると自分の腹の前で交差する腕にそっと触れ、頬擦りをした。



「…珍しいな、そんなことするなんて。」

「…ぼ、くだってたまにはし…たくなるもん…。」

「へぇ…嬉しいこと言ってくれるな。」



柄にもなく赤くなりそうになる。
それを隠すかのように氷狐はセリの首元に顔を埋めた。
優しいセリの香りが鼻をくすぐる。
あまりに平和すぎて感覚が麻痺してしまいそう。
柔らかな日差しとそばにいるセリのおかげか氷狐は次第に眠りに落ちていった。
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