Glare2

□僕の兄さん
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「…ねぇ猫、兄さんの情報は手に入った?」

「申し訳ありませんアリス。今のところは何も…。」



東国にある自然な迷路、迷い森。
そこに佇む一本の大樹の側には女と男…アリスと猫の姿があった。



「でも…月神のお姫様は無事だったんだよね?イカレが言ってた。」

「えぇ、その通りです。…彼が姫君の手助けをしたのでしたら今頃はもう風祭についているでしょうね。」



彼は私達の中で一番守りの戦いが得意ですから。
猫は小さく笑うとアリスへと視線を動かす。
銀色の髪、橙色の瞳、それを縁取る長い睫毛。
全てが旧友、ゲイル・クレヴァーと小春・クレヴァーにそっくりだ。
今は亡き彼等のことを思うと猫は哀しそうに目を伏せた。



「…猫、また父さんと母さんのことを思い出してたでしょ。」

「…ばれましたか?」

「うん、たまに僕を見て哀しそうな顔をするからね。…猫って父さんと母さんの友達だったんでしょ?」

「えぇ、貴女が生まれる前からの…ね。」

「ねぇ猫、生きてるときの父さん達ってどんなだった?」



ぽろり、溢れ落ちた言葉。
アリスがこんなことを言うのには理由がある。
アリスは"生きて"いないのだ。

アリスの両親、ゲイルと小春は生物兵器を息子のように可愛がり、軍を捨てて一緒に暮らそうとしたが反逆と見なされ殺された。
そのあと、その死体の元にやって来たのは生を操る闇色兎。
闇色は暇潰し程度の考えで二人を一時的に蘇らせ、子供をつくらせた。
そうして生まれたのがアリスなのだ。
死者から生まれたためアリスは両親との思い出がない。
だからこそアリスは両親のことを知りたがった。




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