Glare2

□霞んだ視界の先の人
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「う…うぇ‥っ。」



ぽろぽろと涙が出てくる。
まるで一人じゃないよと落ち着かせようとするかのように優しく頬を撫でて地面へと落ちる。
くすぐったいけど、温かい感触は今は感じたくなかった。
那月は乱暴に涙を拭うが、拭っても拭っても涙は溢れてくるばかりだった。



「おい、お前。」



どうにかして涙を止めようとしていた那月は急に後ろ声をかけられ、驚いて振り返った。
涙でぐしゃぐしゃな顔だったが、そんなことはどうでも良かった。
振り返った先にいたのは蒼い髪に薄紫色の瞳をした少年。



「泣いてやがんのかよ。」



めんどくさい奴に話しかけてしまったと言わんばかりの表情をする少年。
そんな少年の態度に那月はむっとしつつも言う。



「しょうがないじゃないっ!知らないところに、来ちゃったんだも…っ。」

「迷子かよ。お前何処に住んでるんだ?」

「東京…。」

「……どこだよそこ。ラズリエルのどの辺にある村だ?」

「ラズリエルって‥?」

「この世界の名前に決まってンだろ、馬鹿かお前?」



訝しげな顔で答える少年を見て、やはりここは日本では無いのだと言うことを那月は実感した。
実感するとともに、また涙がこみ上げてきた。
知り合いもいない、帰り方もわからない。
ただ泣くことしかできなかった。



「うぁぁんっ。」

「な、おいちょっと待てよ!」



泣くことじゃないだろう、と言いつつ少年は狼狽える。
どうやら泣くとは思わなかったようだ。



「トウキョウってラズリエルん中にあるんじゃないのか?」

「にほ、んの中ぁぁっ。」

「あーもう泣くなよ!!」



泣きじゃくる那月に手が付けられないと思ったのか少年は子供をあやすようにぽんぽんと頭を撫でた。
ぎこちないが暖かみのあるその手に安心して余計に泣いてしまったというのは言わないでおこう。
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