Glare2

□空に溶ける
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「ユキ…血の病だったの?」

「…っ。」

「どうして、どうして言ってくれなかったの!?」

「…はっ…。」

「言ってくれたらあたし…!!」



ぽろり、ゼロの瞳から透明な涙が溢れる。
涙はゼロの頬を伝い、やがてユキの造った赤い水溜まりへと静かに落ちていった。



「やだよユキ!…ねぇ、死なないでよぉ…。」



泣きじゃくりながらゼロは言う。
しかしユキはゼロの願いを叶えることは無理に近い、否無理だった。
胸の痛みは和らぐどころかどんどんと酷くなっていく。
正直、もう限界だった。
それでもユキは必死で笑った。
大好きな彼女が少しでも安心できるように。



「…っぜ、ろ……。」

「ユキ…。」

「おれ…ぜろの、こ…と…」

「やめて、無理して喋らなくていいから!!」

「ず、と……好きだっ…た…。」

「…っ!!」



死に逝く者に想いを告げられるなんて迷惑だろう。
でも、やっぱり死ぬのなら最期に伝えておきたかった。
ユキは満足そうに微笑むと最期の激しい吐血をした。



「あたしだってユキのこと…!!」



ゼロの言葉は最後まで聞けなかった。
最後まで聞くよりも早く、ユキの命は尽きてしまったから。
まるで溶けるかのように、安らかに。






落ちていく感覚に似ていた
あの日僕は、空に溶けた





END.
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