Glare2
□空に溶ける
3ページ/4ページ
「…ごめん、ゼロ。」
何て迷惑な事を言ってしまったのだろう。
ユキは林道を歩きながら後悔した。
こんなに後悔をするのだったら言わなければよかった。
しかし、これでよかったのかもしれない。
そう自分に思い込ませて溜め息を吐き、前を向いた。
その時だった。
「―…!!」
ドクン。
激痛と共に口に広がった鉄の味。
鉄の味の正体が何かわかった時、ユキはもう立ってなどいられなかった。
胸の辺りをえぐるような痛みととめどなく吐き出される血。
もう、呼吸をすることも困難だった。
「がっ、は…ぁっ……!」
苦しい、痛い。
ユキは終わりの時を悟ると共に自分のかかった病気、『血の病』の恐ろしさを知った。
『血の病』は特効薬が開発されていない。
発病したら最後、心臓をえぐられるような痛みを感じながら吐血し、最終的には失血死を迎える。
数万人に一人がなるグレア最凶の死の病だった。
「…っは…ぁ…。」
痛みの渦に呑まれながらユキは想った。
さよなら、父上母上。
さよなら、日和国の人達。
さよなら、ゼロ…。
「ユキ!!」
悲痛な、彼女の声が聞こえた。