Glare2

□空に溶ける
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もう、手遅れだった。
病名が発覚した時には同時に余命も宣告された。
1週間…長く持っても2週間の命だと。



「…。」



不思議と死への恐怖は無くて、何だか安らかな気持ちだった。
自分の事よりもゼロのことの方が気掛かりだった。



「…あの子の彼氏でもないのに何心配してるんだろ。」



死んでしまえば自分は彼女の中では過去の人間となる。
ただそれだけだと思ってもちくり胸が痛んだ。
それに、ユキはうすうす気付いていた。
自分の命が1週間ももたずに終わることを。



「友人として…最期の別れを言うべきかな。」



辛くないと言ったら嘘になるが、ユキはその思いを忘れようとするかのように首を振った。



「…。」



嗚呼、駄目だ。
ユキは顔を歪めた。
彼女の家に来てみたものの戸を叩く勇気が出ない。
いっそのこと置き手紙でも書こうかとも思ったがやめた。
伝えたいけど伝えるのが怖い、どうしようもない気持ちに流されている時ユキは声をかけられた。



「ユキ?」

「……ゼロ。」



綺麗な、ユキの大好きな声。
すぐにゼロの声だとわかった。
どこかに出かけていたのかゼロは紙袋を抱えていた。
いつもと雰囲気の違うユキを見てゼロは言う。



「どうしたの、顔色凄い悪いよ?」



ずきん、『どこか』が小さな痛みを感じた。
心地よい声が自分の身を心配する。
嬉しいはずなのに、今は苦しかった。



「…ねぇ、ユキ?」

「…から……れて。」

「?」



ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
言い終わるとユキは走り出した。
ゼロを振り向かずに、前へ前へと。
お願いだから俺を忘れて。
ユキがゼロへ言いたかった言葉。
はたして彼女へ届いたのだろうか。




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