Glare2
□あの時の僕等は
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「ねぇ、ゼロ。」
「何、ユキ?」
春の日和国の土手。
ユキの言葉にゼロと呼ばれた幼馴染みの少女はゆっくりと振り返る。
緑の混じった金色の髪に、夕焼け色の瞳。
見慣れたその色が視界に入り、ユキは安心したように微笑んだ。
「…ごめんね、特に用はないんだ。」
「…?」
ただ、自分の声で振り向くゼロを見たかった。
…そう言ったらゼロはどんな反応をするだろうか。
もしかしたら拒絶されるかもしれない。
拒絶の言葉が怖くて、ユキは少し寂しそうなそぶりを見せながら口をつぐんだ。
「どうしたのよユキ。」
ゼロは不思議そうな顔をして言う。
ユキがこんな行動をするのはいつものことだ。
…でも、名前を呼ばれるだけで嬉しくなってしまう自分はやっぱりユキが好きなのだろう。
その言葉は決して、口には出さなかったが。
「ねぇ…俺、思うんだ。」
二人の座る土手は程良い陽射しのお陰でぽかぽかと暖かい。
その心地良さに目を細めながらユキは言う。
「ずっと、こうしていられたらいいな…って。」
そしたら、いつまでもゼロの側にいられるから。
思っていても最後の言葉は口に出来なかった。
本心を打ち明けたくても恋愛に臆病な自分が邪魔をして上手く表せられない。
軽く、自分自身を嘲笑した。
「…あたしも、ユキと同じこと考えた。」
ぽつり、ユキの言葉に賛同するかのようにゼロは呟く。
その頬は微かに桃色で、より一層愛しさが増した。