Glare

□五話
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「…。」



頬についた返り血を拭いながら黄泉は長い回廊を歩いていた。
静かで自分の足音以外なにも聞こえない。
微かに自分から血の匂いが香ったことには気付かなかったことにした。



「茜の奴さっさと行きやがって…」



伊織のいる屋敷へ着いた途端茜は中へと駆け込んでいってしまった。
駆け込んだ理由は分かっているのだが騒ぎを聞いてやって来た見張りを倒す羽目になってしまったのでやはりいい気はしない。
黄泉は小さく溜め息を吐くと再び前を向いた。
その時。



「気安く私の名前を呼ばないで!!」



高いトーンの声。
明らかに女の声であるそれは直ぐに茜の言っていた伊織のものだと思った。
しかし話によれば茜と伊織は恋仲だったはず。
一体どうしたものか。



「…。」



行ってみるのが先決だ。
黄泉は声のした方へと歩みを進めた。




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