Glare

□プロローグ
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目の前は紅い。
鮮やかすぎるそれは妙に現実離れしていた。
しかし、確かに感じる痛みと早まる鼓動で僕はそれを現実だと理解した。



「兄様ぁっ!!」



悲痛な、僕を呼ぶ声。
僕の体を濡らす紅い水溜まりは、とめどなく溢れてくる。
遠くなりそうな意識を必死に繋ぎ止めつつも僕は死を覚悟した。



「兄様、お願い…死なないでぇ…」

「し、ぐ…れ」



涙を流し続ける時雨に、僕は罪悪感を感じた。
このまま僕が死んだら、時雨はどうなってしまうのだろう。



「時雨様。」



不意に聞こえた凛とした声。
嗚呼、閃の声だ。
僕は思い視線をずらし閃を見た。
僕の龍である閃は、僕の死と同時に死んでしまうのにいつもと変わらない真っ直ぐな目で時雨を見つめていた。



「時雨様、お分かりの様ですが緋影様はもうすぐお亡くなりになられるでしょう。」

「…。」

「緋影様が亡くなられたら貴女が一族の長になられるのです。」

「そんなこと言っても…他の一族の皆は死んじゃったのよ?一人ぼっちで何が出来るのよ!!」

「…時雨様。」



閃は僕をちらりと見ると時雨に向き直り、言った。




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