Glare
□一話
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辺りを充満する血の臭い、物言わぬ肉塊となった科学者達。
研究所の中では少年だけが生きていた。
「…汚い。」
顔についた血を面倒臭そうに拭う。
しかし赤黒いそれは少年の手に生々しい筋をつけるだけで何の意味も成さなかった。
少年は空を見つめながらぽつりと呟く。
「人型生物兵器の…失敗作か。」
ずきん。
声に出したその言葉は、死で満ちた研究所に悲しく響いた。
やはり自分が、創られたイノチであると言うことを思い知らされるようで悲しみと苦しみが胸の奥で混ざり合った。
「…結局誰にも答えてもらえなかった。」
科学者のものであった血だらけの白衣を見る。
それらには名前が書いてあった。
肉塊にすら名前が付いていたというのにどうして自分にはないのか。
少年は自分の存在を、名前を教えて欲しかった。
「……黄泉。」
『あいつは…奴は黄泉の使いだァッ!!』
黄泉、科学者の一人が少年に言った言葉。
死に際に言っていた言葉なのだから決していい言葉ではないのだろう。
しかし負の感情のこもったその言葉が自然と耳に馴染んだ。
「勝手に生んで…勝手に始末する。…そんな奴らに価値を決められてたまるか。」
「俺の名前は…黄泉だ。」
自分の価値は自分で決める。
創られたイノチを持つ少年は、自らを黄泉と名乗った。
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