Glare4

□代価の目
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「…覚悟は出来ているのか、時雨。」



落ち着いた声で真人は時雨に問い掛ける。
彼はきっと、時雨の決意を理解して敢えて問い掛けているのだ。
黄泉は小刀を握り締めた時雨を視界に映すとちらりと双子を見やった。



「うふふ、お姫様はそんな小刀で私達と戦うつもりなの?」

「戦い慣れてないのが丸分かりだよ。お姫様はお姫様らしく…」

「「ナイトを盾にして震えてなよ。」」



声と共に双子は再びナイフを投げ付ける。
時雨の頭と胸の2ヵ所目掛けて飛んで来るナイフを見て黄泉は身構えるがそれよりも早く凛とした声が響き渡った。



「氷壁、守れ!」



辺りを獣の咆哮と冷気が包んだ。
咆哮と共に時雨の脇に控えていた白髪の少年が白銀の龍へと姿を変える。
そして地面からは大きな氷の壁が突き出し、それらは時雨の盾となった。
龍使いの技に黄泉と茜は呆然とする。
氷の壁にぶつかって地面に落ちたナイフを見やると時雨は薄く笑いながら首を傾げた。



「月神の姫をただの姫と勘違いしないでくださいね?」

「「……。」」



双子は何も言わない。
しかしその瞳には酷く殺意が込められていた。
時雨は怯まずに白銀の氷龍を纏った小刀を握り締めてただ、薄く笑っていた。
静寂を破るように、ふいに黄泉が口を開く。



「…それが龍使いの力か。」

「えぇ。この四人は私の龍、龍達と力を合わせることで龍使いは本領を発揮出来ます。」

「ぐちぐちうるさいよ。だったら…」

「「力を合わせる隙を無くせばいいんでしょ?」」



声は間近で聞こえた。
直ぐさま屈み込んだ時雨の頭上をナイフが横切り、躱しきれずに何本かの髪がはらりと落ちる。
狙われているのは今のところ時雨のみ、むしろ時雨しか眼中に無いようだ。
素早く横に転がった後、体制を整えた時雨は叫んだ。



「四龍よ戻れ!刃は炎!」



たちまち四龍の姿は消え、先程まで氷が取り巻いていた小刀には炎が取り巻き始める。
小刀を構える時雨の視線の先にいるのはサイレンス一人。
気配を消して背後に佇むコロナに気付くと黄泉はナイフが降り下ろされるよりも速くコロナの手首を掴んだ。


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