Glare4

□徒花の女
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「ドロテア、俺は…」

「言わなくて良いわよ。」



烙舞の言葉をドロテアは優しく制した。
その口許は僅かに弧を描いており、先程の憂いの表情は消えていた。
ドロテアはゆったりとした動作で立ち上がると骨化した左手で烙舞の頬にそっと触れる。
不思議と、嫌ではなかった。



「全ての人間が敵とは限らないわ。世界は広い、ワタシ達を受け入れてくれる人間だっているはずよ。」

「ドロテアは受け入れてもらえるかもしれないけど、俺は創られたイノチだよ?ただの玩具と一緒さ。」

「そんなことないわ。でももしも人間があなたを拒絶するなら…」



もっと深い深い森の中に逃げて、ワタシと一緒に暮らしましょう?
とくん、その言葉を聞いた途端心臓が大きく鼓動して脳裏には大切な人の姿が浮かんだ。
脳内のガラス越しに自分に微笑みかけるゲイル博士とドロテアが重なる。
気付いた時には烙舞はドロテアを抱き締めていた。
土と花の香りが漂う彼女の体は暖かかった。



「…憎しみを持ち続けるのは辛いことだわ。少しずつでいいから、和らぐといいわね。」

「…ねぇドロテア、本当に一緒にいていいの?」

「もちろんよ。烙舞、あなたがよければ……っ烙舞!」



ドロテアは切羽詰まった声を上げながら烙舞を突き飛ばす。
突然の出来事に理解が追い付かない烙舞だったが銃声を耳にした途端全てを理解した。
追っ手が来たのだ。
ガサリと音を立てながら茂みの中からは銃を担いだ人間が何人も現れる。


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