Glare4

□徒花の女
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「…君ってさ、物好きな奴って言われない?」



てきぱきと手当てを施されていく自分の脇腹を見ながら烙舞は呟いた。
この世に生を受けてから優しく接してくれたのは今は亡きゲイル博士のみ。
新たな優しさとの出会いに烙舞はどう反応していいかわからず憎まれ口しか叩くことが出来なかったがドロテアは気にすること無く人の良い笑みを浮かべた。



「ワタシ、危害を加えられない限り誰かが傷付くのを見るのが嫌なの。」

「へぇ、危害を加えられない限りってことは危害を加えられたら容赦はしないんだ?」

「それはそうよ。殺らなければ殺られる、相手の都合で殺されるのなんてごめんだわ。」

「…ふぅん。」



すん、と匂いを嗅げば相変わらずのあの土と花の香りを感じることが出来る。
ドロテアは口では容赦しないなど言っているが本当は殺しなどほとんどしないのだろう。



「…人間は変わってしまったわね。これでも昔は森の魔女って恐れられていて人間がワタシの住むこの森に入ること自体ほとんどなかったの。でも文明が栄えた今、森の開拓を目指す人間が銃を手にしてやって来る。」

「人間が銃を持ってたってどうってことないでしょ?所詮は鉛の玉、アンデッド=キメラの君を貫けたとしても仕留めることは出来ない。」

「…銃弾に聖水や聖書の一部が練り込んであるの。聖なるものでの傷はなかなか治らないし、そんな物での攻撃を大量に受けた暁にはきっとワタシは死ぬわ。」



嫌よ、引き金を引くって言う些細な動作でワタシの時間が切り取られるなんて。
憂いを帯びた声色でそっと呟くとドロテアは目を伏せた。
寂しげに佇むドロテアを前に烙舞は何も言えないでいた。
何故人間はこうも愚かなのだろうか。
自らの力を過信し、世界の頂点に君臨していると誤解している。
ゲイル博士のように全てが平等だと考える人間もいるだろうがそれもごくごく一部。
文明と言う玩具を手に入れた子供はその力を振りかざしている、なんと愚か。
しかしその愚者達の手によって自分が生まれたことも事実である、烙舞は小さく舌打ちをすると立ち上がった。
ほんの少しの痛みが脇腹に走る。


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